第58章 恋に落ちた女はただの馬鹿だ

夕暮れ間近の下校時間、ひと雨きた。

空はどんより暗く、雨粒がバタバタとベランダを叩く。廊下にも薄く水が溜まっていた。

終業のチャイムが鳴って、山口咲良はふと後ろを振り返る。

――橘結衣が、田中未菜と一緒じゃない。

橘結衣は教室をひとりで出ていくところだった。

咲良はすぐに後を追った。

橘結衣は気の抜けた足取りで1階の昇降口まで行き、外の雨の幕をぼんやり見つめている。

周りには人がぎゅうぎゅうに詰まっていて、傘を忘れた、寮までどう帰る、そんな愚痴がひそひそ飛び交っていた。

橘結衣も手ぶらだ。傘は持っていないらしい。

山口咲良は背後からそっと肩を叩き、笑って言った。

「橘結衣...

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